日本臨床睡眠医学会
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第7回ISMSJ学術集会の特別講演

2015 年 1 月 28 日

第7回ISMSJ学術集会の特別講演は伊ボローニャ大学のFederica Provini先生です。


第7回ISMSJ学術集会では、特別講演に伊・ボローニャ大学のFederica Provini先生をお招きいたします。

ボローニャ大学は古くから神経生理学の臨床研究が盛んに行われてきた大学です。
特に睡眠医学に関しては、パイオニアの一人であるElio Lugaresi教授を中心に、この領域を長年牽引してきた殿堂的な施設です。

Provini先生はボローニャ大学を卒業後、”Pre-dormitum: neurophysiological study(入眠期に関する神経生理研究)”にて博士号を取得。その後も同大学にて、睡眠中の運動異常症の特徴や、神経疾患(特に変性疾患)の睡眠の特徴についての臨床研究を継続されてきました。

Provini先生の研究は、直接的な睡眠観察とビデオ-睡眠ポリグラフ(video-PSG)所見と組み合わせた、いわば睡眠医学の正統的な手法が中心です。この手法をもとに、Provini先生は、これまでに数多くの睡眠関連疾患の臨床像や神経生理学的特徴を明らかにされました。

Provini先生の主な業績は以下のとおりです。

■1■ 睡眠関連てんかん症候群(夜間前頭葉てんかん)の臨床的・神経生理学的特徴の解明1。Provini先生の100症例を対象とした直接観察やvideo-PSG記録に基づく知見は世界に類がなく、本疾患の診断基準の根拠にも採用されています。

■2■ 下肢静止不能症候群(Willis-Ekbom病)(RLS/WED)にみられる睡眠時周期性四肢運動(PLMS)の病態解明2。Provini先生はRLS/WED患者にみられるPLMSについて初めて詳細な電気生理学的検討を行い、脊髄における異常な興奮性が関与しているとの仮説を提唱されました。この研究成果は、国際的なRLS/WEDの診断スケールにも影響を与えています。

■3■ 入眠期固有脊髄路性ミオクローヌスの疾患概念確立3。脊髄内で生じた異常興奮が介在神経を介して吻尾側方向に伝播し、連続的なミオクローヌスが出現するというユニークな特徴を有する本疾患は、Provini先生らによる観察と神経生理学的追求により詳細が明らかとなりました。

■4■ Agrypnia excitata*の概念の提唱4。致死性家族性不眠症、Morvan症候群、振戦せん妄(アルコール離脱せん妄)では、モノアミン神経系の持続的活性化や概日リズムの喪失を背景に、徐波睡眠の減少・夢幻様昏迷・運動および自律神経の過活動状態が共通してみられることを指摘し、この状態を”agrypnia excitata*”と名づけられました。(*持続的な興奮性不眠状態を意味するが、定まった邦訳はない)

今回はProvini先生より、”Looking into sleep from the viewpoint of neurophysiology(神経生理学の視点から睡眠をみる)”というタイトルでご講演いただくことになりました。直接的な睡眠観察やPSGの生波形から、いかに脳機能を推測できるか、いかに多くの新奇的発見が導かれるか、といった睡眠医学の面白さを学べるものと思います。

【主な論文業績】
*1.Provini F, Plazzi G, Tinuper P, Vandi S, Lugaresi E, Montagna P. Nocturnal frontal lobe epilepsy. A clinical and polygraphic overview of 100 consecutive cases. Brain 1999;122:1017-31.

*2.Provini F, Vetrugno R, Meletti S, Plazzi G, Solieri L, Lugaresi E, Coccagna G, Montagna P. Motor pattern of periodic limb movements during sleep. Neurology 2001;57:300-4.

*3.Vetrugno R, Provini F, Meletti S, Plazzi G, Liguori R, Cortelli P, Lugaresi E, Montagna P. Propriospinal myoclonus at the sleep-wake transition: a new type of parasomnia. Sleep 2001;24:835-43.

*4.Lugaresi E, Provini F. Agrypnia excitata: clinical features and pathophysiological implications. Sleep Med Rev 2001;5:313-22.