日本臨床睡眠医学会
~日本に境界なき睡眠医学を創る集い~

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組織委員長挨拶

2012 年 7 月 31 日

 
 人生の3分の1を人間は眠って過ごすこととからもわかるように、睡眠は、生物の生存に欠かせない脳の重要な機能です。その一方で、文化や環境の制限の下で、睡眠は軽視され、犠牲になりがちです。
 
 メンタルヘルスや身体疾患は睡眠に影響を与える一方で、睡眠の問題は、メンタルヘルスや身体に悪影響を与えます。従って、不眠、眠気を初めとする睡眠に関連する訴えに適切に対処するためには、特定科の医療職のみならず、全ての医師、看護師、検査技師、保健師、さらに心理職が睡眠に対する正しい知識を持ち、職場や地域、医療・介護施設など様々な立場で適切な助言・指導できることが必要です。

 Integrated Sleep Medicine Society Japan(ISMSJ: 日本臨床睡眠医学会)は、睡眠の問題を訴える方々に対して、各保健医療職が全人的にどのようにアプローチし、他の職種と連携し、助言あるいは診療するかを学ぶ場を提供することを大きな柱の一つとしています。このような学際的な教育プラットフォームは従来日本になく、全く新しい視点による学会です。その「学び」の主要命題が、睡眠生理とスリープヘルスという共通語を皆が身につけるということであり、特定の疾患の有無を調べるための「検診」のノウハウのみならず、統合的な立場で「睡眠」を学ぶ場です。欲を言うならば、睡眠のつきない謎・魅力を共有する場を提供し、健康増進や睡眠関連疾患の診療を担う人材を育成したいと願っております。

 第4回ISMSJ学術集会は、昨年に引き続いて、神戸で開催いたします。今回のテーマは、「睡眠をとりまく社会、睡眠につらなる社会」です。小児科医としては、乳幼児期の睡眠不足が就学時の多動や認知の問題のリスクになるという海外の報告に鑑みて、日本の子どもの睡眠時間が先進国の中で最も短いという現状が日本の将来に及ぼす影響について大いなる懸念を抱いております。この原稿を書いている現在、日本は原子力発電再稼働の可否について、緊喫の経済改善か、将来の安全かという視点から大揺れにゆれておりますが、長期的視点をもって子どもの睡眠を守るということについての是非についても皆様と一緒に考えていきたいと思います。
 
 皆様とともに、有意義な3日間となることを祈念いたしております。

             大阪大学 連合小児発達学研究科 
             谷池 雅子