日本臨床睡眠医学会
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「第8回ISMSJ学術集会」第2日目(2016/8/6) レポート

2016 年 9 月 12 日

《第2日目:8月6日(土)》

 第2日目は、堀有之先生によるモーニングセミナー「病院入院患者や施設入所者における睡眠の問題と対応策」で始まりました。

 タイトルとは裏腹に(?)、なぜか朝からとても泣ける内容でした。このような社会背景の視点から睡眠の問題を捉えていく講演は、いかにもISMSJ学術集会でしか聴けないお話であったと思います。

 続いて午前中はトーキングポスター発表です。この形式での発表はすでに5回目ということもあり、演者の皆様による要旨のアピールも年を追うごとに洗練されてきたように思います。本学術集会の演題発表は大規模ではありませんが、その分トーキングポスターをとおして自分の専門領域や職域以外の話題に触れることができるのも、本学術集会の魅力といえるでしょう。

 2日目のランチョンセミナーは、イスラエルよりお越しいただいたGiora Pillar先生に、最近のhome sleep testingの話題について講演いただきました。

 午後はいよいよ本学術集会のメインプログラムである組織委員長講演と特別講演です。香坂雅子先生による組織委員長講演「女性のねむりと健康」では、まず月経周期により睡眠がどのように変化するかの生理学から始まり、更年期や高齢期の女性における睡眠構築の特徴、そして高照度光がどのような効果を与えるかまで、香坂先生がこれまでに手掛けてこられた研究の知見を余すことなくお示しいただきました。私どもは普段の睡眠診療でも性差を意識しつつ対応することはあるかとは思います。しかし香坂先生のお話を伺い、正しい生理学的知識を備えた上で対応することで、一層女性にとって適切な診療ができるものと気付かされました。また普段の光環境の工夫で一層の健康増進が図れることも、認識を新たにできました。

 続く特別講演は、カリフォルニア大学サンディエゴ校精神医学教室の名誉教授Sonia Ancoli-Israel先生に賜りました。Sonia先生はご存知のとおり高齢者の睡眠の第一人者でいらっしゃいますが、今回の講演では「がんに対する光療法について:睡眠、倦怠感、概日リズムへの効果」と題してお話いただきました。その内容は、がん患者の睡眠の諸問題とその疫学、およびそれらの問題にどのようにアプローチすべきかという流れでした。一般にがん患者の臨床的問題というと、痛みの緩和や気分症状への対応がクローズアップされがちです。しかし、化学療法が睡眠覚醒リズムの異常をきたし、ひいては持続的倦怠感や気分症状悪化を招きうることは、意外と知られていなかった事実かと思います。さらにSonia先生は、高照度光療法が睡眠覚醒リズムの是正をとおして倦怠感や鬱を改善させうるとするデータもお示しになりました。光療法という非侵襲的な介入によりがん患者のQOLを改善させる可能性があることは、我々睡眠医学に携わるものが他の専門領域に睡眠の大切さを伝えていく上で、ぜひ記憶しておきたい知識と思われました。

 2日目最後のプログラムはポスター発表の本セッションでした。プログラム冊子内の参加者へのメッセージのひとつに「熱く議論しても礼を失せず、喧嘩はしない。議論しながら一緒に学んでいける仲間は何よりも宝」とあります。

 今回の学術集会でも、互師互弟の精神に則りつつ、これまでになく熱いやりとりが展開されていたようです。

                       (文責:ISMSJ広報HP委員会 小栗卓也)




第8回ISMSJ 学術集会 第2日目(2016/8/6) レポート




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