日本臨床睡眠医学会
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「第13回ISMSJ学術集会」レポート

2022 年 10 月 31 日

 
                        奈良県立医科大学 呼吸器内科学講座  山内基雄




2022年10月7日(金)、8日(土)の2日間にわたり第13回日本臨床睡眠医学会学術集会を奈良で開催しました。今回はオンデマンド配信を行わず現地開催(+Live配信のみ)で行いましたが、現地参加184名、Web参加62名の計246名という沢山の方々に参加していただきました。無事に学術集会を終えたものの、達成感と同時に反省点や改善点など第14回ISMSJ学術集会開催に向けて役に立つ経験も沢山することができました。ここでは、第13回ISMSJ学術集会を主催した私から総括をしてみたいと思います。


【学術集会開催までの準備期間】
組織委員長としての最初の仕事は学術集会のテーマ決定です。テーマは『次世代型睡眠医学の息吹き』としました。テーマ決定は私にとってそれほど難しいことではありませんでした。なぜなら、デジタルネイティブ世代(巷ではZ世代と呼ばれ、生まれながらにしてインターネットが利用可能であった世代のこと)の人々と一緒に働く時代になったこと、また生体情報を取得する非拘束小型ウエアラブルデバイスなどの技術革新がめざましく、睡眠領域にもこのような技術がどんどん入り込んできている状況を鑑み、人も物も全てが『次世代型』になっていると感じていたからです。『息吹き』は呼吸器内科医が組織委員長を務めることを少しアピールした形になります。そしてテーマの裏にある意味合いですが、AIを初めとしたデジタルツールの便利さを安易に睡眠医学で使用してしまうと、「進歩した技術に使われる医療者」になってしまいます。これは非常に危険です。そうならないために、ある意味アナログ的とも言える基礎知識をしっかりと習熟したうえで、「進歩した技術を使いこなす医療者」にならなければなりません。「進歩した技術を使いこなす医療者」による睡眠医学はまさに次世代型だと考えた次第です。


さてテーマが決まれば、組織委員の立ち上げとプログラム構成、そして開催形式の決定に入っていきます。呼吸器内科医がISMSJ学術集会を開催するのは2013年以来のことになりますので、睡眠関連呼吸障害に大きく偏らないものの特色のある呼吸障害系のプログラムを組み込むことに私はこだわりを持っていました。組織委員の先生方とうまくコミュニケーションを取ることができて、魅力的でISMSJらしい睡眠関連呼吸障害系のシンポジウム・教育プログラムを組むことができたと思っています。その他のプログラムも非常に内容が充実しており、組織委員の先生方には心から感謝しています。開催形式ですが、Live配信までは許容できても現地開催重視でオンデマンド配信を行わないこと、そして懇親会を開催することに私は強いこだわりを持っていました。ISMSJの学会規模と学会のミッションを考えますと、現地に集まり、職種を越えて仲間を作り、お互いを高め合いながらチーム医療を推進させるためには現地開催しかないと考えていました。コロナ禍以降オンデマンド配信があるのが普通と思われる風潮に危機感を覚えています。オンデマンド配信では現地に来なくても、そして何度も視聴して知識を得ることができるかもしれません。しかしオンデマンド配信では学ぶことができません。学びには人を見て、人から直に聞いて習得することが含まれます。私の持論で恐縮ですが、「学ぶ」と「知識を得る」は違うと考えています。学会という場は学ぶ場だと思っています。知識は論文や教材から得ることができるでしょう。またオンデマンド配信を行わなかったのは、私自身発表しにくいオンデマンドが大嫌い、Audienceに面と向かって双方向性でしゃべりたいという勝手な理由もありました。


現地開催と決めた以上、交通の不便な奈良までどれほどの人が来てくれるだろうかと思うと、参加者数が運営に直結するため絶対に赤字にはできないというプレッシャーを強く感じていました。まずは共催セミナーや展示ブース出展をしてくださる協賛企業の獲得にかなり尽力しました。もちろん組織委員の皆様も尽力くださいました。その次は現地参加者を増やす声かけです。もちろん誰でも良いというわけではなくISMSJのミッションに賛同してくださるであろう方々に個人的に宣伝もしました。


現地開催にこだわった背景には、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは奈良で開催する頃には終息しているだろうと思っていたのもあります。そのため、特別講演も米国からTerri Weaver先生とお呼びすると決めていました。ところがオミクロン株による第7波の襲来、いつまでも先行きが見えない状況が続き、このままじゃ、現地開催重視・懇親会開催は不可能かもとの不安が募るばかりでした。しかし決めた方針で前に進むしかないと、日本入国の際に必要となったTerri Weaver先生のVISA申請書類作製(コロナ禍前は不要)を行いましたが、これは大変でした。また懇親会開催も直前になり感染対策を十分に施すことを余儀なくされ、着座形式でしか開催が難しい状況になりまた。これでは、沢山に人たちとのコミュニケーションは成り立たないと考え、急遽会場に交渉し、アメリカ留学時代によく経験したパーティーを思い出し、バーカウンターを用意して、そのスペースでマスク着用のうえ飲むときだけマスクをずらして飲みながら立ち話をする時間帯を設けました。その後懇親会のお部屋に移動して着座するように構成しました。柔軟に対応してくださった懇親会会場の「ヒルトップテラス奈良」様には感謝しかありません。バスの手配なども実は非常に苦労したのですが、ここでは割愛します。お弁当を食べるランチョンセミナー会場での感染対策も実行委員の皆様のアイデアで行うことができました。これも以外と直前に決定したこともありバタバタでした。


Terri Weaver先生が来日したあとは、自分自身で案内などしていたこともあり、直前の運営の詳細と感染対策は私の大学のスタッフに任せきりになってしまい、かなり迷惑をかけたと思っています。しかし、そんな状況でもうまく舵取りをしてくれたことに感謝しています。



【第1日目】
前日に会場視察したときは晴天で、「俺はやっぱり晴れ男だ!」と勝手に思っていましたが、1日目は朝から本降りの雨でした。私に優る雨男か雨女が居るに違いありません。しかし、平日の金曜の朝からにもかかわらず多くの参加者にお越し頂きました。朝一番のシンポジウムは肝いりプログラムの1つであった「職業運転手等のOSA患者の眠気の対応を考える」でした。普段聞くことのできない内容であり、また議論も交わされて良いシンポジウムであったと思います。その後の組織委員長講演は、次世代へのメッセージということで私のこれまでの歩みをお話しさせていただきました。あまり学際的な内容はなかったことはご容赦ください。その後も濃密なプログラム満載で休む暇もなく、一日があっという間に過ぎたのではないかと思います。組織委員長の私は、運営側でなにかとバタバタすることが多く、じっくり全てを聞くことができずでした。



【第2日目】
2日目は、2会場に別れモーニングセミナーが朝早くから行われました。続いてシンポジウムと教育プログラムが並行してありました。どちらに行こうか迷った参加者も多いかと思います。
その後、Terri Weaver先生の特別講演。ここでの講演内容は、実はかなり前からTerri Weaver先生と打合せをしていました。Terri Weaver先生とは以前からの友人で、一度、彼女自身の歩みの話を講演で聴いたことがあります。内容は、最初の頃の苦労話、仲間に出会って道が開けたこと、その後自分自身の視点、看護師の視点から研究を広げていった話でした。この話をどうしてもISMSJ学術集会の参加者に聴いて欲しかったのです。しかし、そうなるとTerri Weaver先生の学際的な話をする時間が無くなるので、その部分は協賛企業に依頼し共催セミナーという形で話題提供してもらう手はずを整えました。反省点は、事前にスライドを和訳して参加者の皆様にダウンロードできるメールをお送りしたのですが、メール送信が直前すぎて翻訳資料を手にすることなく聴かれた参加者も多かったと聞いています。Terri Weaver先生は早くにスライドを送ってくれていたのに、忙しくて和訳に手が回りませんでした。
その後の内容の濃いプログラムが続き、あっという間に最後のイブニングセミナーを残すのみとなりましたが、最終日で時間が遅いにもかかわらず多くの方が残ってくださいました。最後の私の閉会の辞は、疲れで何をしゃべったか今も良く思い出すことができません。睡眠を専門としているのに極度の睡眠不足で疲れた頭と身体をフル回転させたので、記憶する余力がなかったのか、あまり詳細を覚えていないのが残念です。そんなにしんどい思いをしたのに、会場で参加してくださった皆様の笑顔を思い出し、今はやりきったという充実感に浸っています。



最後になりましたが、会員の皆様ならびに理事・組織委員・実行委員・共催/出展企業・運営支援企業の皆様におかれましては、多大なるご協力とご支援を賜り、この場を借りて感謝申し上げます。 組織委員長としては、ISMSJらしい学術集会を開催できたのではないかと思っています。今回の経験を第14回ISMSJ学術集会組織委員長の鈴木雅明先生に引き継ぎ、さらなるISMSJの発展に繋がるようにしたいと思います。今回参加してくださいました皆様におかれましては、是非来年度もご参加いただき、ISMSJが皆さまの発展の場となるように引き続きのご支援をよろしくお願い申し上げます。




第13回ISMSJ 学術集会レポート





   

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